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それはファッション誌から始まった。社会を変えたPR① LGBT前編

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2009年度からメディアの露出量が903倍になった「LGBT」。

本記事では、一大ムーブメントとなる前の2009年から2013年までに、どのような動きがメディア業界の中であったのかを分析します。

2009年時、「LGBT記事」は1件のみ。  

「LGBT」という言葉が使用された記事数(新聞・雑誌)と検索数をグラフ化した。

LGBT」という言葉が使用された記事数(新聞・雑誌)と検索数をグラフ化した。

以上のグラフでは、2009年~2013年の間に、新聞・雑誌・web上でどれくらい『LGBT』という言葉が使用されたか、また検索されたかが示してあります。一番左の2009年次には、LGBTが使用された記事は、全国紙で1件のみ。

    

その内容は、「性的少数者から見た米国を考える ジャーナリストの青森での講演会」というもので、青森全県・2地方に小さく掲載されたイベントの紹介です。

    

2012年時、国際NGO Human Rights Watchの土井香苗氏は、朝日新聞でこんなコラムを書いました。

私たちのような国際NGOや国連の文書をはじめ、(LGBTは)世界中で使われている言葉だ。しかし、朝日新聞の過去の記事を検索してみると、この2年間で「LGBT」が紙面に登場したのは、青森版の「青森インターナショナルLGBTフィルムフェスティバル」の紹介記事ぐらいだ。 

まだまだ社会的な認知はおろか、全国紙に務めるメディア関係者の間の認知度が低かったことが伺えます。  

当事者間で話題を呼んだ、30pの大特集!GQ「THE POWER OF LGBT

  

2009年から13年までの期間にも、雑誌がいち早くLGBTの特集を行いました。2009年・10年次には、雑誌の露出数が新聞よりも多く、特に2009年には、LGBT界隈で大きな話題を呼ぶ企画が組まれました。その一つが、男性向けファッション雑誌GQ『LGBTが世界を動かす。THE POWER OF LGBT』です。

 

男性向けファッション誌GQ

 

本特集は30Pにもおよび、主な切り口として、ナイキ、マイクロソフト、グーグルといった世界のリーディングカンパニーが、いかに優秀なゲイの人材を確保するために努力しているか?また、日本で6兆円にもなる潜在的LGBTマーケット、また世界のゲイイベントの経済効果など、企業の参入意欲を掻き立てる切り口や、トランスジェンダー向けファッションなどの、一般市民向けのカルチャーなどの多方面の特集が組まれました。

(世界をリードする最強パワーゲイ33人! など、GQには、今尚読み応えのある記事が多く残る)

 

このような雑誌は、新聞が扱うストレートニュースとは異なり、1) 一つの現象を掘り下げ、2)社会の潮流となっていないニッチな情報を深堀することが大きな特徴です。

1)なぜ一つの現象を掘り下げることができるの?

雑誌は、新聞よりも、記事のネタ出しから納品までの時間が長く、裾の長い取材ができることが特徴です。

※新聞内には社説や調査報道等もあるが、今回の事例ではストレートニュースに焦点を当てます。

2)なぜ社会の潮流となっていないニッチな情報を深堀できるの?

雑誌は新聞よりも、発信頻度が低いことが特徴です。例えば、全国紙では日に2回に対して、雑誌は月2回または月間での発信を行います。そのため、一つのトピックに対して、比較的長く取材を行えます。

GQでは、流行の種となるような、多種多様なトピックが掲載されました。

電通総研が発表した「LGBT人口、5.2%」の衝撃

電通総研LGBT調査2012

大きな変化があったのが、2012年7月。電通総研が発表したLGBT調査である、公的な統計がなかった中で、7万人という大規模なサンプルへの調査は、社会に大きなインパクトを与えました。

電通総研の調査で、『人口の5.2%がLGBT*』という、インパクトのある数字が導き出されました。

*人口統計学者より、サンプルの偏りが指摘された調査であり、その信ぴょう性は定かでは無いですが、以後雑誌や新聞記事内で度々引用されました。

 

東洋経済・ダイアモンドオンラインの2大経済誌の「LGBT」特集が始まる!
 
 
   

同年7月には、東洋経済にて「LGBT最前線 変わりゆく世界の性」、11月にダイアモンドオンラインにて、「LGBT――もはや、知らないでは済まされない――」が組まれた。二台経済誌の1年以上の連続掲載により、企業人に対しての認知度が少しずつ上がってゆきました。

  

2誌の読者の特徴は、意思決定者ではなく、一般社員・中間管理職層の割合が多いこと。「もしかしたら身の周りにいるかもしれない...」「拡大する市場なのでは...」ボリューム層である、中間層の企業人へと、様々なフックがきっかけとなり、認知度が格段に増えたと思われます。 

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2大経済誌の読者層。調べていて面白い気づきだった。

(東洋経済 ユーザープロフィール2019年度版・週刊ダイヤモンド Media Guide 2019 より)

 

変革は地方から起きる!?「アーリーアダプター」は地方版記事だった!

調査報道、そして東洋経済を初めとする経済誌・ファッション誌での大規模な特集により、LGBTのメディア内認知も進んで行きました。2013年度には前年度と比べ、2倍以上の露出がありましたが、その内訳を見てみると...

LGBTの新聞記事

地方版比率が多い!

新聞の紙面には「全国版」「地方版」があります。1面や社会面、政治面、経済面、国際面、スポーツ面、論説面、くらし・健康面などは全国版です。これに対して、地域面は「ぎふ面」とか「さいたま面」など、各県や各地域ごとに面があります。

   

社会面・新聞の社会面や1、2、3面、テレビ欄、スポーツ面、くらし面は、各本社ごとに作っています。理由は、地域によって、ニュース価値が異なるからです。例えばスポーツでも、「ちば面」では千葉ロッテマリーンズの話題の方が、ヤクルトスワローズの話題よりも、優先順位が高く報道されます。

  

LGBT支援宣言 大阪・淀川区、米総領事とタッグ 【大阪】

「多様な性」向き合う 新潟で講座、相談窓口も / 新潟県

 

 2013年度は、LGBTに関する「日本初」の取り組みが、地方で同時多発的に起こり、それを地方版の記者たちがいち早く伝えたのです!!

  

ここまでのまとめ:

2009年度までのLGBT記事は1件のみ。そこから、ファッション誌GQが「世にまだ出回っていないが、世界の常識であるLGBTのテーマの深堀をする」企画を実施、2012年には電通が行なった大規模の調査報道が、多様なメディアに引用される、有力ソースとなった。2013年時には、全国紙への掲載も始まるが、同時多発的に起こるLGBT関係の動向を一番機敏に報道したのは地方版の記事でした。 

   

調査報道・雑誌・地方版の発信を通じて、じわじわと全国へと広がって行ったLGBTが、どのように巨大ムーブメントへと繋がって行ったのか?

続きは、次回の2014年から2018年度の『LGBT拡大期』にて!

 

来週もお楽しみに!!